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瀬戸内に浮かぶ島の光はやわらかく
それでいてどこか鋭い.
その光の中にちいさな集落が息づいている.
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三方を細い道に囲まれた土地に
これから一つの家を建てる.
家といっても、単なる住まいではない.
日本酒をふるまい
器を売り
人の行き交う場所だ.
豪奢なものではなく瀬戸内の海風に吹かれながら
島の土と話し合うような
そんな家だ.
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玄関はひとつの物語になるだろう.
ただの出入り口ではない.
奥へ奥へと、心を運ぶ通り道.
道に開き
島に開き
人に開く
奥行きのある場所.
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外から中へ、中から奥へ.
玄関はそんなふうに
あいまいにふくらんでいく.
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道に面して三方を開く.
そこにはきっと島の人や
この島に訪れた人たちが腰掛けるだろう.
酒を傾け、器を手に取り、語らうだろう.
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海から渡る風と、島にしみこんだ記憶と.
すべてがこの場所に、少しずつ滲み出していく.