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この地に立てば耳に届くのは
風の音ばかりではない.
かつて火を囲み石を削り
土を焼いた縄文の人々の気配が
いまも土の奥底に息づいている.
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畦地遺跡に眠る磨かれた石斧の面
鋭さを宿した尖頭器の輪郭
土師器の破片.
それらは単なる出土品ではなく
大地に刻まれた呼吸であり
時を超えていまを支える「骨格」である.
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土器に火を映し
水をたたえ
森と語らいながら生きた縄文人の暮らしは
いまも風のざわめきや土の匂いに溶け込んでいる.
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その歴史の層に呼ばれるようにして
陶芸家の夫婦がこの地に根を下ろすこととなった.
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土を捏ね
火を入れ
器を立ち上げる.
その手は遠い縄文の呼吸と共鳴し
ひとつの連なりを織り成す.
人と土地とが交差し
時間と空間が絡まりあう地点にこそ
住まいは生まれる.
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設計とは単なる図面を引く作業ではない.
ここに棲む人の営みと
この地に積層した記憶とを
ひとつの形に編む行為である.
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だからこそいま私たちは契約を交わす.
それは紙に署名する行為でありながら
実のところは縄文から続く千年と
これから紡がれる未来とを結ぶ
「誓い」そのものなのかもしれない.












