
:
配筋検査のため柳井へ
:
鉄と土の対話を見届ける儀式みたいなもので
図面に描かれた直線が
現場でわずかに揺らぎ
地の癖と人の手がそこに滲む.
:
鉄筋はただの素材ではない.
やがて家の骨となり
見えなくなるものだ.
だからこそこの瞬間に目を凝らす.
鉄が正しく並び
組まれ結ばれているか
その一筋一筋に
設計の意図と現場の知恵が宿っている.
:
配筋は語る.
家が立ち上がる前に
その命の流れがここにあると…
:
配筋検査のため柳井へ
:
鉄と土の対話を見届ける儀式みたいなもので
図面に描かれた直線が
現場でわずかに揺らぎ
地の癖と人の手がそこに滲む.
:
鉄筋はただの素材ではない.
やがて家の骨となり
見えなくなるものだ.
だからこそこの瞬間に目を凝らす.
鉄が正しく並び
組まれ結ばれているか
その一筋一筋に
設計の意図と現場の知恵が宿っている.
:
配筋は語る.
家が立ち上がる前に
その命の流れがここにあると…
:
日差しが静かに街を包み込むなか
琴平新町の鳥居のそばで
一本の柱がそっと立ち上がった.
:
やがて梁がかけられ
空と地面のあいだにひとつの秩序が生まれる.
それは何かを主張するのではなく
ただ静かにそこにあるということの
意味を問いかけてくる.
:
木は木として
職人は職人として
過不足なく役割を果たし
建築という形をそっと支えていく.
:
この場所に必要とされたものは単なる機能ではない.
時間に耐え、時に寄り添い
やがて風景と呼ばれるものと
やわらかく結びついていく存在.
人々がそこに身を置き
心を澄ますための場.
:
棟が上がるということは
建築がようやくひとつの呼吸を
始めるということかもしれない.
その息づかいを
人々は言葉にせずとも感じている.
:
鳥居をくぐるたびに
ふと視線がその方へ向かう.
それは建築が町の時間の一部となる瞬間だった.
:
瀬戸内に浮かぶ島の光はやわらかく
それでいてどこか鋭い.
その光の中にちいさな集落が息づいている.
:
三方を細い道に囲まれた土地に
これから一つの家を建てる.
家といっても、単なる住まいではない.
日本酒をふるまい
器を売り
人の行き交う場所だ.
豪奢なものではなく瀬戸内の海風に吹かれながら
島の土と話し合うような
そんな家だ.
:
玄関はひとつの物語になるだろう.
ただの出入り口ではない.
奥へ奥へと、心を運ぶ通り道.
道に開き
島に開き
人に開く
奥行きのある場所.
:
外から中へ、中から奥へ.
玄関はそんなふうに
あいまいにふくらんでいく.
:
道に面して開かれた軒下空間.
そこにはきっと島の人や
この島に訪れた人たちが腰掛けるだろう.
酒を傾け、器を手に取り、語らうだろう.
:
海から渡る風と、島にしみこんだ記憶と.
すべてがこの場所に、少しずつ滲み出していく.
:
小高い丘の上にぽつんと姿を現した校舎は
どこか遠い記憶を呼び覚ます.
:
赤茶色の屋根は夕陽を吸い込みながら
なおも土の匂いを纏っている.
それは新しいのに
なぜか昔からそこにあったような佇まいで
風の通り道をよく知っている.
:
深く張り出した軒は雨をしのぐばかりではない.
ひとつの時間を抱える場所として
子どもたちの声や沈黙をそっと包みこむ.
小さな空間が大きく息づいているのは
そこに「余白」があるからだ.
:
建築が人の営みを待っている.
そんな気配がもう漂っている.
:
十五坪の宿の長屋計画
小さな、実に小さな空間である
:
だけど人は狭さを憂うばかりではなく
その狭さにこそ心の自由を見出すこともある
:
ここは生口島の島の中腹
瀬戸内の静けさに包まれ
時に忘れられたかのようなところである
:
この地はかつて海の道を見張る者たちの拠点だった
村上水軍、ただの海賊ではない
秩序と混沌のあいだで海の暮らしを守り続けた者たち
その眼差しが注がれた瀬戸内の島々が今静かに佇んでいる
:
多島美とはよく言ったものだ
島と島とが折り重なり海と空の境界がほどけていく
その風景にかつての文人も旅人も
そして今を生きる我々もまた
心を奪われずにはいられない
:
蕪村も子規も詠んだこの海
「海と空 わけても青し 瀬戸の春」
:
言葉は時を越え
風景と交差し
この宿の窓辺にも静かに降りてくる
:
十五坪の暮らしは喧騒を離れた贅沢であり
風と光の遊び場である
瀬戸の島影とともに暮らす
そんな時間がここには確かに息づいている
:
石を根とする大黒柱は真ん中に鎮座し
八角形の空間へと枝を広げる
:
屋根の架構は麻の葉
:
その文様は強靭にしてしなやかで
生命の力が編まれたかたち
:
その包まれた空間のなかで
子どもたちは息づき伸びていく