Category Archives: 街づくり

琴平の家 棟上げ

日差しが静かに街を包み込むなか

琴平新町の鳥居のそばで

一本の柱がそっと立ち上がった.

やがて梁がかけられ

空と地面のあいだにひとつの秩序が生まれる.

それは何かを主張するのではなく

ただ静かにそこにあるということの

意味を問いかけてくる.

木は木として

職人は職人として

過不足なく役割を果たし

建築という形をそっと支えていく.

この場所に必要とされたものは単なる機能ではない.

時間に耐え、時に寄り添い

やがて風景と呼ばれるものと

やわらかく結びついていく存在.

人々がそこに身を置き

心を澄ますための場.

棟が上がるということは

建築がようやくひとつの呼吸を

始めるということかもしれない.

その息づかいを

人々は言葉にせずとも感じている.

鳥居をくぐるたびに

ふと視線がその方へ向かう.

それは建築が町の時間の一部となる瞬間だった.