(日本語) 藍住の平屋

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所在地:徳島県板野郡
竣工:2022年6月
用途:専用住宅
構造:木造平屋建
敷地面積:302.94㎡
建築面積:106.23㎡
延床面積:102.68㎡
写真:野村和慎
 
 
吉野川の流れが長い年月をかけて育んだ扇状地。その穏やかな地形の中に静かに広がる住宅地の一隅にこの住まいの計画地はある。周囲には隣家が近接しており、外からの視線に対してある程度の距離感と静けさを確保する必要があった。一方でただ閉じるのではなく、自然の気配や季節の変化を内に取り込み、日々の暮らしの中で自然と呼応しながら過ごせる住まいでありたいと考えた。そこで建物の構成をコの字型とし、中庭を抱えるように配置することで外界との緩やかな断絶と、内なる自然とのつながりを両立させる構成とした。建物は平屋である。扇状地の広がりと呼応するように、地面と水平にのびやかに広がる一層の空間が、この土地の穏やかさと深く響き合う。平屋は時に単調に見えるが、それだけにどのように変化を与え奥行きを生み、光や風、視線の流れを設計するかが問われる。そこで床の高さに微妙な段差を設けたり、天井高に変化を与えたりすることで、空間にささやかなリズムと間合いをつくり出した。子供部屋は中二階のような高さに設け、家全体にこもる空気の中に浮遊するような気配を持たせている。また読書コーナーは家具によって仕切ることで、空間の連続性を保ちながら用途ごとの場所の性格を緩やかに与えている。和室は中庭を介して他の空間とつながり、屋内でありながらも庭の風や光を感じる半屋外的な場となっている。建物の中庭を囲む配置は外部の喧騒から離れ、内に向かう時間を生み出す。そしてその中心には空があり、風が通り季節が巡る。建築は機能だけを満たすのではなく、光や風といった自然の表情と響き合いながら人の心に静かに寄り添う場を生み出すこと。それはすなわち建築が時とともに成熟し、住む人とともに育っていくことに他ならない。この住まいが長く土地に根ざし、住まい手の日々をやさしく包み込む場所となることを願っている。