(日本語) 朝倉の家

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「浮き庭の家」
 
敷地は高知市の郊外の旗竿状の土地で、周囲は隣地で囲まれているが、唯一南側に母屋が建っているため、母屋とのつながりを手がかりにプランを組み立てた。密集している住宅地のためプライバシーのみを確保するのではなく、母屋とのつながり、建築空間と外部空間を連続的にさせるため眺める対象とはせず、住まい手との繋がりを持たせる庭を模索した。住まい手の要望は明確であった。ご夫婦とも学校の先生だからなのか、とてもわかりやすくA4の紙一枚にまとめていた。「必ずお願いしたいこと」「必要なもの」「欲しいもの」「こんなのがいいな」と。床面積や部屋数であらわされる価値よりも、空間の広がりやそこで生活する家族の関係を、いかに豊かに出来るかをイメージする一方で、さほど広くない外部空間には駐車スペースが必要なため、庭はガレージの上へと持ち上げた。住まい手を庭から遠ざけないために、玄関から入ったLDKは段差で柔らかく仕切りながら、浮き庭へと緩やかに外部空間につなぐ。それぞれの部屋には出来る限り建具をなくし、家族の気配や空気、光を共有し、窓の高さを調整しながら外部の視線もコントロールした。仕切りのないそれぞれのフロアは、家の中心となる吹き抜けを介し内部を開放的に見せるが、視線のズレによりふと顔を覗かせる。日々の移りゆきとともに豊かな意味と適度な距離感を発生させている。宙に浮いた庭も人と共に四季を感じ、形容しがたい気配がその場所に馴染んでいるように見えた。どこからか蝶々やバッタがやってきてカエルが生息する。外部から生命体を取り込みながら共に生息する。A4の紙に書いてあった「死ぬまで住み続けたい家」というのがすべての始まりであったように思う。
 
 
所在地:高知県高知市
竣工:2019年3月
用途:専用住宅
構造:木造2階建
敷地面積:149.91㎡
建築面積:H/58.38㎡ G/16.38㎡
延床面積:H/103.92㎡ G/25.42㎡
写真:野村和慎