地鎮祭

 

2021年に構想が芽生えたこの家は

四年の時間を経てようやく地鎮祭を迎えた.

やっと始まるというよりも

ここから静かに続いていくという感覚に近い.

 

この四年間のあいだにいくつかの家を引き渡してきた.

そのたびに変わらず足を運んでくれた.

他に心を奪われることなく

距離を保ちながら

しかし確かにこちらを見続けてくれていた.

その姿勢だけで建築に向けられた思い

人とのつながり

何とかしてこの場所に応えたいという気持ちが

少しずつ輪郭を持ちはじめる.

 

高知県須崎市東部に位置する吾井郷(あいのごう).

かつて荘園「津野庄」の中心として栄えたこの地は、

新荘川がつくり出した平野と

穏やかな気候に支えられた土地である.

農の営みが今も生活のすぐそばにあり

時間の流れがどこか緩やかだ.

 

清流・新荘川の気配は

この敷地にも静かに届いている.

カワウソが最後に確認された川として知られるその風景は

派手さはないが確かな生命の厚みを感じさせる.

ここでは建築もまた声高に主張する必要はないのだと思う.

 

この家が目指すのは

風景に溶け込むことでも

風景に逆らうことでもない.

 

日々の暮らしが自然に積み重なり

その結果として建築がそこに「在る」こと.

時間とともに馴染み

いつの間にか生活の背景となり

ふとした瞬間にその良さに気づく

そんな居場所でありたい.

 

四年分の想いと

この土地が持つ記憶.

それらが少しずつ重なり合い

これから形になっていく.

吾井郷の風と水のそばで

静かな建築が

またひとつ始まろうとしている.

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