花火と月と平野
事務所の屋上にて
職業柄、忙しいときは仕事が
深夜に及んでしまうことがある。
夜の方がかえって仕事が進んだりする。
午前中に新鮮な気持ちで
仕事を次々と進めていく快適さも大事だけど、
昼間には常識的な考えしか
浮かばなかったことが、
夜になるとフワッとアイデアが
生まれてくることが多々ある。
学生の頃は設計の課題で
幾度となく徹夜を経験する。
そして、徹夜でモノを生み出すことの
楽しさみたいなものを共有する。
夜は人を少しだけ変え、
昼間には隠されていた
楽しさのふところに触れさせてくれる。
夜、仲間たちと久しぶりに飲み明かす。
夜、ふとしたきっかけで何時間も電話で話をする。
夜、小説にはまり時間を忘れて読みふける。
夜、全てを遮断して、思考を深め、図面を書き続ける。
夜、試験が迫っていることに焦りを感じながら、
自分の将来について夢想する。
家のどこかに
その深夜力を大切に守る場所を
作り出すことが、
きっと建築家の役割なのだろう。
夜、時に人を執拗にさせる。