古墳、あるいは静かな構造

 

柳井市に完成した家の引渡しの後

瀬戸内の光がやわらかく回り込む丘の上に

静かに横たわる前方後円墳に寄る.

 

全長約90m.

四世紀後半

この土地を治めた首長の墓とされる.

けれどここに立つと

「権力」よりも先に

「地形」が語りかけてくる.

 

削りすぎない.

盛りすぎない.

もともとの丘の稜線を受け止めながら

ほんの少しだけ人の意志を重ねる.

それはまるで

「地形を支配する」のではなく

「地形に許してもらう」ような所作だ.

 

墳丘は、空に向かって主張しない.

むしろ、周囲の山並みへと溶けていく.

輪郭は曖昧で、だからこそ強い.

建築もまたこうありたいと思う.

 

敷地を読むこと.

風の抜けを知ること.

光が最も静かに落ちる位置を探すこと.

 

古墳は建物ではない.

けれど空間の原型がそこにある.

外形は単純でありながら

内側には石室という「祈りの構造」がある.

見えない部分にこそ手間と思想を注ぐ.

それは私たちが建築に対し思い描いてる

「普通であることの強さ」にどこか通じる.

 

特別なかたちを追わない.

ただ、そこにあるべき輪郭を探す.

柳井茶臼山古墳に立つと

時間の厚みが音もなく身体に沈んでくる.

 

派手さはない.

観光地としての賑わいも多くはない.

けれど確かに

この土地は四世紀から続く

「場所の記憶」を抱えている.

 

建築は未来をつくる営みだと言われる.

しかし同時に土地の過去を引き受ける行為でもある.

この古墳のように主張せず

しかし揺るがない輪郭を持つ建築を.

 

地形に寄り添い

時間に抗わず

静かにそこに在る.

 

それが私たちの目指すかたちなのかもしれない.

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