場所に選ばれる建築

 

畦地遺跡に呼び込まれるようだった.

風が先に通り地面は何も語らずそこにある.

その場所に立つと、ただ「ここだ」と思えた.

建築はときどき人の意思より先に場所が選んでいる.

 

「初神の家」の請負契約を終えた.

けれどこれは始まりではなく

静かに続いてきた時間が

ようやく輪郭を持った瞬間なのだと思う.

 

打合せを重ねるたび

かたちは少しずつ整っていった.

ろくろの上で土が器になっていくように

急がず、抗わず.

 

強すぎれば崩れ

弱すぎれば立ち上がらない.

建築もまた力の加減の中にある.

 

設計者、つくり手、住まい手.

誰か一人の仕事ではない.

歩幅をそろえ

ときに乱しながらも

不思議と前へ進んでいく.

 

遺跡のそばに建つからといって

特別なかたちは求めない.

時間の層にそっと重なり

昔からそこにあったかのように佇むこと.

遠い過去を渡ってきた風が

静かに軒下を抜けていく.

そんな家になればいいと思う.

 

ろくろを離れた器が

乾き、焼かれ

やがて手に馴染んでいくように

この家もまた

暮らしの中で少しずつ

完成していくのだろう.

 

畦地遺跡に見守られながら

今日もまた一歩.

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