住宅の設計は、
たぶん事実小説を組み上げるのに
似ているのだと思う。
単に事実の羅列では
小説にならないように、
使い勝手を処理しただけでは
住宅にならない。
時代背景の中に位置付けるように、
気候や風景、歴史の中に収めるのである。
一方では予算や材料、
施工や法的なことなどの制約があり、
他方には世界観や人生哲学の
崇高さが求められ、
住み手の生活と関心や執着、
はたまた夢と現実を
満たさなければならない。
一つ一つの謎解きをしていくようなもので、
住み手と施工者と設計者とで
一つの作品に仕上げていく過程の中で、
希望と現実を繰り返すように、
紙の上から現場へと移り、
躯体が組み上がっていく。