中庭に巨岩が居座っている。
工事の時に目を覚ました巨岩である。
この家が脇役になるくらいの巨岩である。
樹や石に神を見るのは日本文化の基層の性格だけど、
いまさらそれを持ち出すのはやめようということで、
巨岩が一つあるのは厄介だから
もういくつか置こうと考えた。
そうすれば物神性は少し和らぐだろうと確信し、
動かすことを伝えたと同時に、
監督の眉が曇ったのを見逃さなかった。
土に埋まっていた岩を掘り起こしては散りばめ、
散りばめては動かした。
散りばめるほど軽いものではないけど、
お陰で自然に溶け込んだ。
職人たちの力で仕上がった。
曇った眉が晴れ渡った職人の技術で完成した。
この庭園は未来を暗示しているに違いない。