天城の家

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「天城の家」
 
住宅地に住まう空間において、プライベートを確保するといった内向きの空間を生きることはごく自然なことになっています。一方、多様で複雑な環境の中で、開放的な暮らしも同時に手に入れたいという思いも少なくありません。敷地の環境にもよりますが、このような構成や環境は重要なのではないでしょうか。かつては武家屋敷・町人町をもつ陣屋町として発展した倉敷市藤戸町は、今でも古い商家の建物が残り往時の面影を色濃く残していますが、その歴史的な町並みとは対照的に、計画地は田を埋め立てた新興住宅地の一角にあります。新たなまちがつくられていくこの場所で計画するにあたっては、周囲に対する圧迫感を軽減すると共にクライアントの要望であったプライバシーの確保として、コの字型のプランとしました。つまりヴォリュームの中の「内へ向く空間」と屋根やデッキ等の床、柔らかく仕切る目隠しの塀といった面でつくる「外へつながる空間」の相反するものを共存させることによって、建物を内から外へと多様な場をつくることを考えました。当初クライアントは平屋を希望していましたが、敷地の大きさや要望の内容からだと平屋にするのは難しいため、子供室のみを2階に、主要となるLDKと主寝室等を1階に配しました。リビングとダイニングキッチン、そして寝室はコの字型の真ん中にあるプライベートな中庭を介し、緩やかな空間の連続性を生み、お互いの気配がなんとなく感じられるようになっています。2階建て部分の大きな屋根は平屋の屋根に連続していき、連続する切妻の屋根は道路に近づくにつれ低く抑えられ、圧迫感を与えないようにしました。これは空間を覆ったりコの字型で囲ったりするだけでなく、その建築を周辺環境へどのように関係づけるか明快に表現できたと思います。
 
 
所在地:岡山県倉敷市
竣工:2013年4月
用途:専用住宅
構造:木造2階建
敷地面積:201.50㎡
建築面積:104.97㎡
延床面積:116.48㎡
写真:野村和慎
 
 
「homify」